ヴィクトール・E・フランクルは、第二次世界大戦時にナチスに捕らえられて強制収容所で過ごした体験をもとに、世界的な名作「夜と霧」を書いた精神科医です。
強制収容所という、死と隣り合わせの極限状態の中でも、彼は「ここで死ねない」と感じ続けました。
「どんな状況になっても、生きていることには意味がある。無駄な人生はない。ここアウシュヴィッツで殺されていった人たちの人生にはそれぞれ意味があり、この苦しみの中にも意味がある」
そう確信した彼は、ナチスに解放されたあと、この哲学を確立させて「実存分析」という学説を打ち立てました。
フランクルは、人には3つの価値を生み出す力がある、と説いています。
まず1つ目は「何かができる、何かを創り出す、行動する」という価値。
2つ目は「何かを体験する、感動する、さまざまな感情を味わう」という価値。
3つ目は「自分の態度を変えることで、自分や周りを素晴らしいものに変化させる」という価値。
彼は、どんな日常も素晴らしいもので、価値があるという信念を持っていました。
そして「どんな人生も、それぞれかけがえのない素晴らしいものである」と伝え続けました。
彼の講演会で、こんな質問が出たことがあります。
「フランクル先生は立派な精神科医で、多くの人を励ますメッセージを広めていらっしゃいます。だからあなたの人生には、生きる意味があるでしょう。ですが私は洋服屋です。私の人生に、さほど大きな意味はありません」
フランクルは答えました。
「あなたは洋服をつくることを通して、人々に喜びを与えています。新しい洋服に袖を通す喜びを、あなたは創造しているのですよ」
これは、1つ目の「何かを創り出す」という価値に当てはまります。
続いて、こんな質問も飛び出しました。
「私は元デザイナーです。ですが病気で手足が動かなくなり、廃業せざるをえません。私には、何かを創造する価値がなくなってしまったのです」
フランクルは答えます。
「人には『体験をする』という価値もあります。あなたは、手で何かをつくることはできなくなったかもしれませんが、いいものや美しいものを見極める力を持っています。他の人が創造したもののよさを感じたり、味わうことができるのですから」
これは、2つ目の「体験する」という価値に当てはまります。
またある時、フランクルはこんなことを語っています。
入院生活を送っているおばあさんがいました。
毎日、病室で寝たきりです。
ある朝、彼女は窓の外を歩く勤め人たちの姿に気づきます。
その元気のない姿を見て、おばあさんはあることを思いついたのです。
それまで身だしなみも整えなかったおばあさんですが、翌日から髪をとかし、薄化粧をし、身なりを整えて車椅子で外へ出て、笑顔で勤め人たちに声をかけ始めたのです。
最初は誰もおばあさんに目をとめることはありませんでしたが、数日経つうちに、自分から彼女に挨拶をする人も出てくるようになりました。
その数はどんどん増えて、おばあさんは最後まで幸せに生きることができました。
これは3つ目の「自分の態度を変えることで、自分や周りを素晴らしいものに変化させる」という価値に当てはまります。
このように、どんな人にも、それぞれに生きる価値があります。
もちろん人生には浮き沈みというものがあり、状況が悪くなることもあるでしょう。
ですが彼のように曲線を描きながら、必ずよい方向へと進むようにできています。
だから、その途中で自暴自棄になったり、あきらめたり、悲観して投げ出したりしてはいけないのです。
あなたの人生はかけがえのないものであり、大きな価値があるからです。
『あなたは、あなたのままでいてください。』聖心会シスター 鈴木秀子
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所長視点
環境や出来事に感謝する人は、人を喜ばしたいエネルギーが湧いてきます。
どんな環境であっても、受け止め、感謝する人は、いまある環境を素晴らしいものに変化させることができます。
それを実感できたとき、自分に対する自信、誇りを感じることができます。
感謝って奥が深いですね
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